PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

UAV測量プロジェクト

震災からの復興に
最新のICTで貢献

大槌町の土地区画整備事業に参画し、ドローン測量で工事遂行の道筋を示す

フジミコンサルタントの設計技術者として長く活躍していた秤谷は、東日本大震災で津波被害を受けた大槌町の大規模盛土を伴う土地整備区画事業に参画。建設・土木のICT化が進む以前から、業界の先駆として活躍し震災復興に大きく貢献した。
先輩の秤谷に、2021年入社の上野がプロジェクトの詳細と苦労、やりがいを聞いた。

MEMBERS

  • 秤谷 嘉明 
    YOSHIAKI HAKARIYA

    ICT事業部 チーム長
    2000年入社

  • 上野 大樹 
    DAIKI UENO

    ICT事業部
    2021年入社

海に面した地盤は沈下するため、盛土測量を繰り返す

上野
私は今、秤谷さんの下でUAV(ドローン)測量や報告書の作成方法までを学んでいます。秤谷さんがこれまでに携わった仕事の中で、一番思い入れのある仕事は何ですか?
秤谷

それは何といっても「大槌町の震災復興プロジェクト」です。上野君も知っていると思うけど、岩手県大槌町は2011年3月11日に大きな津波被害があった場所です。震災復興に向けたプロジェクトとして、2014年に「住みたい街づくり」をテーマに減災と多重防災型のまちづくりに向け、大規模盛土を行う土地区画整備事業が本格化しました。

パートナー会社の前田建設と当社フジミコンサルタントは、5社JVとなったプレロード工法(盛土載荷重工法)採用の工事に参画し、当社では私がUAV測量と解析を担当しました。本社のサポートを受けながら、2014年3月から2018年7月まで、毎月半分以上は現場赴任していました。

上野
プロジェクトではどんな仕事と役割をされていたのですか?
秤谷
UAV測量と測量結果からの毎月の土量解析と作業計画作成、航空写真からダンプ走路の検討までが役割でした。ドローンを使った測量といっても、工事前にどのような地形なのかを調べる「起工測量」、どれくらいの量の土を盛ったのか工事の進捗況を見る「出来高測量」、どのような地形が完成したのかを測る「出来形測量」という流れがあり、当プロジェクトでは「月次出来高測量」に最も時間をかけました。

広範囲を短時間で測量するため、一からドローンを学び実践

上野
様々な業務に携わっていたのですね。工事の過程で大変だったことは何ですか?
秤谷
私が赴任した2014年当時は、津波被害で囲われた場所がまだ多くありました。ビルの窓を突き抜けて土砂が入り込んでいたり、ベランダが海水で錆びていたり。その悲惨さを見て街を失った人々の生活を取り戻す力になりたい、と強く思いました。当時はドローンを使った測量が本格化する前のこと。工事と並行し、広範囲を短時間で測量できる点でドローンを活用しようということになり、一からドローン技術を勉強し実践に当たりました。
秤谷

大槌町全体の広さ60haは、東京ドーム約12個分という広大さ。地盤をかさ上げし、高台に住宅を移転する計画でしたが、海に面した土地柄かつ津波によって水分を含んだ軟弱地盤のため、土を盛っても沈下します。そのため、事前の圧密沈下を事前に促進することで地盤の強度を増加させるプレロード工法を繰り返し行いました。

ドローンによる航空写真は表面しか写らないので、沈下棒を使って先月と今月でどれくらい土の増減があったかなど正確な土量解析に努め、データと実際の写真を合成・解析して3Dモデル化しました。
ドローン操作は何より安全第一を心掛けました。飛行場所の現地調査を入念に行ったうえ、飛行時の天候・風速等には細心の注意を払い、雨風が強ければ絶対飛ばさないようにしていました。また万が一落下しそうになった場合、どこに着地させるかなども必ず想定していましたね。そうした準備を進めた結果、ドローンを壊すことなく安全に一台を使いきりました。

住民の方が航空写真を感慨深く見つめ、
立ち直る姿に勇気をもらう

上野
いろいろな苦労があったのですね。やりがいはどのようなときに感じましたか?
秤谷

現場の作業員とは常に交流しましたし、地域のお祭りに出向いて地元の方の声も聞けました。家を失って仮設住宅に住んでいた方が高台に新しい家を建て「ようやく快適に住めるようになった」という声を聞くと感慨もひとしおでした。工事終盤の2018年には、街が生まれ変わっていく様子も実感しました。

ドローンで撮った航空写真は一部、インフォメーションルームに掲示したのですが、それを感慨深そうにご覧になったり、持ち帰ったりしていただきました。住民の方の笑顔や立ち直っていく姿に励まされ、自分も震災復興と街づくりに貢献できたという手応え・やりがいを感じました。ドローン測量を通じて“これは後輩に教えてあげたい”といった発見と学びがあったことも収穫です。

上野
私自身、今のお話を聞いて、自分も街づくりや地域貢献性の高い仕事をしてみたいと思いを新たにしました。今後、秤谷さんの体験からいろいろ学んでいきたいと強く感じています。今後、秤谷さんとしてはどのような目標を立てられているのですか。
秤谷
当社のUAV測量は現在、写真データの取得が主ですが、今後は情報取得データのより高度で広範囲な利活用を模索したいと思っています。例えばレーザードローンを活用すれば内部構造もわかることで法面崩落調査などができるようになるし、衝突センサー等を活用すればドローンのトンネル内自動化も可能になります。こうした新しい技術を導入し、それをまた上野君たち後輩にどんどん伝えたり、教えたりしていきたい。その結果が、当社のUAV測量事業の拡大とICT技術の向上につながればと思っています。
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